ポンッ、と両手に乗せられた漆黒の刀



刀の事はよく分からないが、兄らしいそんな風に思えた



「沖田様..ありがとうございます。」



ギュゥゥ、と刀を抱き締める



嬉しくて、でもなんだか哀しくて...


「兄さん、兄さんっ....!!」



ただ私は兄さんの名を呼ぶことしか出来なかった



「それじゃあ、今日はこの部屋で休んで?
土方さん達の話じゃ明日から忙しくなるみたいだからね」



「え、あ...、沖田様!」



泣きそうな、頼りなさそうな顔をしている私は慌てて隣の部屋に入ろうとする沖田様を引き止める



「何か、お礼をっ!」




刀はこの壬生寺とは正反対に汚れもなければ、新しいもののように綺麗だ


きっと、それに見合う手間がかかったはず。



だから何か、今の私には返せるものはないがお礼がしたいと思い、沖田様を引き止めた




「え...、ああ..、そうだなあ。

じゃあ、総司って呼んで。」



「え...?」



爽やかな笑みでそう言うと部屋の中に消えて行った沖田様。



お礼が総司と呼ぶ、なんて少し変わっているが彼が望むのならそれを叶えなければならない




でも、総司と呼ぶなんて...


時間がかかりそうだ。