慌てて頭を下げるとゴンッ、と額に鈍い痛みが走る



勢いをつけ過ぎてしまった。




いや、だって、あれだ。


目の前に兄さんがお世話になった方がいるんだ


仕方が無い



「ふっ、お前...本当に似てるなあ。」




「はい..?」




顔をあげれば一人の男が口元にゆるりと弧を描きながら笑う




「いや、嫌味ではないんだ


武久も...兄の方な、あいつも最初ここに来た時、そうやって畳に額をぶつけてたんだよ。」




懐かしむようにまたふっ、と笑い私を見る



その笑顔は男の人のはずなのに、花のように思えてしまって。


その笑顔を何人の女を落としてきたのだろうか...、きっと両手では数え切れないんではないか...。



本当にそう思うくらい綺麗で美しいものだった



「ここのみなさんは、みんな私を兄さんに似てるって言うんですね」



門番の方も、門番の方も...そしてこの人も..



そんな私は兄さんに似てるんだろうか?




「嫌だったか?」



「いえ、そんな事は...」