そう言って分が悪そうに下を向く門番




まだ、私はこの時知らなかった
いや、後からも知る必要はなかった




知らなければ、今までどおりでよかったのに。

あの人のそばに何も考えずに一緒にいれたのに。





『兄さんは、貴方に、仲間に殺されたのです、ね。』





あんな泣き、恨むことなど...なかったのに。






「慶...さん?」





不意に誰かに呼ばれる




優しい声、耳に残る、そんな声。





そんな声を耳に残しながら後ろを向けばそこには男一人。




ザアッ、と風が空を駆け、最後の咲き散った後の桜の葉が宙を舞う




「....はい。」




控えめに、だがはっきりと返事をすれば、男の表情が驚きから柔らかなものに変わった