肩を掴まれそう言われれば、兄を知っている方だと分かり、緊張の糸が一気にほどけてゆく
「兄をご存知で?」
身内のいなかった私たち兄妹。
知り合いの有無も分からず、生きてきた。
こうして、兄を知っている者がいるというのはなんとも嬉しい
「ああ!
清史郎は、あいつは優しく強い奴だった。
少し女顔だったのが惜しかったがな。」
「ふっ、間違いねぇ。」
少し冗談を交えながら二人の門番はなんとも遠い目で事を話す。
ああ、兄さんは、ちゃんと生きていた
ここで、ちゃんと生きていたんだ...
私の知らない兄が、少し見えた
誰かの心に残っている兄を見れた
それだけで嬉しくて、涙の膜が耐えきれなくなり、瞳からは大粒の涙が頬を伝ってしまう
「うわっ、妹さん大丈夫かっ?!」
門番の男の人の慌てる声が頭上で聞こえる、それにうなづき、涙を何度も何度も拭うが止まらない、止まらないのだ

