「え、あのっ....!!!」


「照れとるんのもかわええわ〜
総司なんかにやるんはもったいないなぁ」


「へっ?!」



冗談混じりでそういった山崎様は私の足の傷に響かないよう、優しく、だが素早く闇の中をかけてゆく



その夜は風を切る音や、月明かりがいつにもまじめ鮮明に感じ取ることができ、まだ何が起こったが分からない私はただ山崎様の腕の中でぼんやりと、そんなことを思う



「山崎様...」


「ん?」


だいぶ、あの伊東様たちなどが暮らしていた屋敷を離れた時だ

彼に声をかければ口に当てていた装束を外しながら、私の問いかけに答えようもしてくれる


「なんで、こんな事を...

それに総司のおかげとは?」


今一番に思っている疑問を選んでぶつけてみると、ツンツンと頬をつつかれてしまう



「後者は言葉の通りや

総司がなあ、近藤さんや土方さんに土下座していったんや

”慶をさらう許可を下さい”ってなぁ。」



兄さんのお墓での出来事が蘇る

まさか、本当にさらってくれるなんて思っても見なかったが、もうそれだけで胸がいっぱいいっぱいになった


「前者は今度詳しく話すけど、伊東様をわいらが暗殺したんや

多分、今頃伊東さんは油小路らへんで殺され取るかもしれんな。」