「慶、今なんて...!!!」



距離があったはずなのに、それなのに今はもうそんなの全くなくて強く掴まれる腕



「何も...何も言ってない..」



総司の迫力に押されながらふるふると首を横に振って訴えるが、総司は腕を離そうとはしない



「慶、ちゃんと教えて..

そしたら、僕は.....君を、」



きっとその先の言葉は私が望んでいること、叶えて欲しいこと。



だけど、どうしてもちらつく兄さんの顔



「本当になにも...、私はっ、」



ポロリ、と零れ落ちた涙は身体が耐えきれなくなって上げた悲鳴なのかもしれない



それを見た瞬間、緩んだ総司の手を振りほどくと急いでその場を去る



ドタドタ、と大きな音をたてて帰り着いたなり、自室へと駆け込みポロポロと畳へと涙を零す



「う、あ...あぁっ!!!」



総司が好きで、たまらなくて...


でも、心とは逆の行動をとってしまう脳



兄の幻聴や幻は、私の弱さ


決してあれは兄さんなんかじゃない。



そう分かってるのに、自分に素直になれなくて、心と体が逆に引っ張られて引きちぎられそうになる




それにもう、戻れない




私はもうすぐ総司ではない、他の誰かに嫁いでしまう



時間がもどれば...そう思ってももう遅くて、私はただひたすら泣き続けた