「伊東様と共に...行きます。」



それから数日後、そんな思ってもない事を伊東様に告げた


「そう、賢明な判断だわ。
これからよろしくね、武久さん。」



ねえ、どうせあなたが仕組んだのでしょう?



こうなると分かっていて、私を導いたのでしょう?



そう本当は思っていても言えない、言えるわけがない。



”それでいい、それでいいぞ慶。
総司を殺せる日もそう遅くはないかもなぁ”



兄さん...、



「はい、伊東様のおかげで目が覚めました。
これからもよろしくお願いします。」




悲鳴を上げる心。

締め付けられたと思ったら、いきなり憎悪が湧いてきたり...



発狂したっておかしくないかもしれない




それでも、正気を保ってられるのは、微かに残る唇の感覚



本当にあの時の口づけはサヨナラだけの意味が含まれていたのだろうか?



もし、サヨナラだったとしても私はそう思いたくない



憎んでいるのに愛おしい。



私、本当に貴方が好きみたいよ総司




この気持ちが届いて欲しいと思うのに、届いたら?、そんな不安もよぎる



そして、私はあの日以来彼の顔を見ることなくグラグラ揺らぐ想いのまま伊東一派とともに屯所を出て行った




二度と会えない、ううん、会わない



それが一番、この恋の正しい道だとこの時は思ってた。