だけど、それも限界を迎える時が来ると何故分からなかったんだろう



素直に、言っておけば慶に嫌われて離れてしまっても、最悪の状態は逃れられたはずなのに...



あの時の僕はとてつもなく傲慢で我儘だったんだ




そうあの日、洗濯物を手伝った晩のことだ


今日も慶と一緒にいれたことに満足感を感じながら、刀の手入れをしていた時、不意に障子の向こう側から声がする



「総司...起きてますか?」



紛れもない、慶の声


こんな夜更けにどうしたんだろう、そんな疑問も持ったが、夜という事もあり、何故かそわそわと落ち着かない



「どうしたの慶?」



わざと余裕のある感じで障子を開けると、少し寂しそうな笑顔をした慶がちょこんと座っていた



「総司に聞きたいことが..あるんです。」


「そう、なら入って、ここ(廊下)じゃあ寒いでしょ?」


僕がそう言うと何の疑いもなく部屋へと入り僕の真ん前に座っていつにまして真剣な瞳を僕に向ける



「で..、聞きたいことって?」



僕が何もためらわずにそう聞くと少し申し訳なさそうに口を開く慶


「今日、私..伊東様と話をしたんです」


「へぇ..、」


あの、蛇とか、そう思うと一気に悪い予感がしてきてならない

それに加えて、僕以外の男と二人っきりで話した慶に苛々してしまう



「それでどうしたの?」


感情を表に出さないよう笑顔で聞くと、次の瞬間、今にも泣きそうな顔で彼女は僕を見た


「総司は...


兄さんを殺してなんかいませんよね...?」