「翔也先輩の……お母さんって……」
おそるおそる、そう聞くと。
「…うん。亡くなったよ。僕が小学生の時にね」
「そうだったんですか……」
翔也先輩は、力ない笑顔で笑った。
今まで、翔也先輩はただの明るい人、というイメージが強かった。
やさしくて、周りを見ているいい人だけど、能天気な人なんだと。
だから、こんな風に哀しい笑みを浮かべるだなんて、想像もできなかった。
小学生の頃に母親を亡くすなんて、辛い体験だっただろう。
自分を大切に育ててくれた、かけがえのない人を失ってしまったんだから。
それなのに、弱さを見せず、笑顔でふるまって、みんなと接している翔也先輩をすごいと思った。
哀しい想いを微塵も感じさせない、翔也先輩を。
けれど、今この場にいる翔也先輩は、弱さを見せている。

