いじめは始まった。毎日呼び出され意味もなく殴られた。大好きだった加藤先輩はいつも私を最初に殴った。
「引退試合もひかえてたのに1年が何やってんだよ!」
「死ね!」
「二度と面見せんな!」
「よくのこのこと学校来れんな!」
「目障りなんだよ!」
膨大な量の汚い言葉を浴びて、でも当然だと思って殴られていた。持ち物はなくなる、机は何度拭いても『死ね』と書かれた。拭かなくなれば『死ね』と言う文字で埋めつくされた可哀想な机になった。
夏世はあれ以来学校には来ていない。ゆかりも欠席が増えていた。私だけが毎日報いを受け、3人分の罪を背負っていた。親には言えなかった。

痣だらけになり、帰宅した。部活は退部させられたから前よりも早い帰宅だ。汚れた制服を洗濯機に入れた。梅雨は終わり、夏になっていた。
「かなえ、ドーナツたべる?」
にこにこ笑う母の顔が嬉しかった。ここにいる時だけが自分でいられた。
「食べる!」
そういうと見慣れたチェーン店の箱を出し、一緒に食べようと母が誘った。