Holy-Kiss~我が愛しき真夜中の女神達へ~【吸血鬼伝説】

「そうさ!
 姉貴はな!!
 今まで、どんなに辛くったって、泣かなかったんだからな!!!
 お仕事でヒドいことされても!
 ミヨちゃんが、おなかがへって死んじゃったときも!!
 みんな、ガンバれって、泣かなかったのに!!」

 坊主は、目に一杯涙を溜めて。

 早苗を守るように、俺の前に立ちはだかった。

「……なのに!!
 お前が、姉貴を泣かせたんだ!!!」

 坊主の血を吐くような叫びを。早苗の細い、凛とした声が遮った。

「……違うの!
 止めて、和明(かずあき)!」

「でも!」

 なおも言い募ろうとする、和明をおしとどめて、早苗は、頭を下げた。

「わざわざ……
 お知らせいただき……ありがとう……ございました」

「こんな奴に、頭なんか下げんじゃねぇよ、姉貴!
 兄貴が死んじまったなんて、そんなウソ……!
 証拠だってねぇのに!」

「……遺髪が」

「信じねぇ!!!」

 早苗に差し出した白い小さな包みを手で払って、和明は、外に飛び出した。