Holy-Kiss~我が愛しき真夜中の女神達へ~【吸血鬼伝説】

「俺は、工藤誠一郎。
 この『銀杏荘』の主だ。
 俺がお国の為に。
 南方最前線に征(ゆ)く前は、確かに旅館だったのに。
 ここはいつから娼館になったんだ?」

 俺の言葉に、男は、ケッと唾を吐いた。

「今日びまだ『お国の為』とほざく間抜け野郎に、久しぶりに逢ったぜ」

 傷の男が首を振ると、残りの男達がばらばらと俺を取り囲んだ。

「オレたちが戦地からようやく、帰ってくりゃ、何もねぇ。
 家も、家族も、職も……食物もな。
 負け戦でひーひー言ってるお上も、オレたちのことは保障一つせず、知らん振り、だ。
 それでも、内地の女子供が生き延びていられるのは。
 オレらが死ぬ思いで、戦ったからだぜ?
 だから、内地の女は全部オレ達のもんだ。
 自分の取り分を、自分で分けて何が悪い」

「……何を莫迦な」

 俺の抗議を、兵隊上がりの男達が、げらげらと笑って遮った。

「いいじゃねぇかよ!
 それとも、ナニか?
 貴様は、ここで女に恩を売っといて、後でイイコトをしようってぇ寸法か?
 残念だったな。
 オレたちゃ、女に見合うだけの対価も支払っている。
 合意してヤってんだよ!」