しかも。

 バケツに突っ込んだ音に驚いて誰かが来る気配もする。


 俺は、牙王の爪を胸に抱いたまま。

 無理やりにヒトの姿に戻る。

「……が……ぐ……」

 刺さったままのするどい爪が、新たに俺を傷つける。

 痛みに。

 とうとう、意識が飛ぶ寸前。




 誰とも知らない女の悲鳴が、路地裏いっぱいに響き渡ったのを聞いていた。