「や……ん
 どうしたの……?」

 息を上げ、頬を膨らませた花連に、俺は素早く服を着ながら言った。

「悪い。
 急用が出来た」

「何よぅ……?
 こんな中途半端にしたまま、出て行くなんて!
 他の、女の所、なんて言ったら怒るわよ?
 ……それに、食事は……?
 今日は、めずらしく血が欲しい、って言ってたのに……」

 ベッドから落ちそうなほど、しなだれかかる女を軽く抱きしめて。

 俺は、シーツでその細い身体を包む。

「……この埋め合わせは……近いうちにしてやる。
 だから、今夜は、行かせてくれ。
 ……食事は、コンビ二で弁当でも買うさ」

「……吸血鬼が、コンビニのお弁当……?」

 けらけら笑う、花連の額をつついて、俺も少し笑った。

「うるせぇな。
 俺は、何でも食えるんだ。
 女でも。
 男でも。
 人間の食事でも……
 しかし……お前。
 のんきに笑っているが、本当は命拾いしたんだぞ……?
 空腹の俺が、本気で血を吸ったら……
 ……お前は死んでしまったかもしれないのに。
 それに……
 吸血鬼に抱かれるのは、お前は嫌じゃないのか……?」