Holy-Kiss~我が愛しき真夜中の女神達へ~【吸血鬼伝説】

 頑固に言い張る俺の言葉に、嫌気がさしたのか。

 早瀬は、小さくため息をついた。

「では、仕方がありません……」

 ……あきらめて帰るか?

 などという言う、俺の希望を、早瀬はあっさりと打ち砕く。

「今日は力ずくでも、戻っていただきます」

 こんな。

 ただの、人間の。

 か弱い女が、俺を『力ずく』で何とかできるわけが無かった。

 しかし。

 さっきからずっと感じていた首筋のちりちり感がひどくなる。

 ……殺気に。

 女の言葉を笑えなかった。

 用心して動かない俺に、早瀬は、冷たく微笑むと。

 黒い携帯電話のような機械を取り出して、誰かを呼んだ。

 囁くように。









「牙王………!」