Holy-Kiss~我が愛しき真夜中の女神達へ~【吸血鬼伝説】

「それは、こっちが聞きたい所だ。
 女」

 俺は、慎重に言葉を紡ぐ。

 だんだん高まって来る緊張感に、首の毛をちりちりと逆立てながら。

「俺に関する情報はほとんどすべて……
 人間に変化時の顔かたちと、背格好以外は。
 俺の身体のありとあらゆる細胞片や体液に至るまで、すべて、クロイツに提供し、データが残っているはずだ。
 情報についても、覚えている吸血鬼の言葉だけじゃない。
 俺の個人的な……それこそトラウマに至るまで、全部話して聞かせたはずだ。
 これ以上、俺が、お前たちに渡せるモノは何も無い」

 なのに。

「あんた達は、なぜ。
 そんな好待遇で、俺を引き留める?
 俺を飼いたがる?」

 俺の質問に、早瀬は、口角を少し持ち上げた。

 ……笑ったらしい。

 そして、早瀬は、淡々と話した。

「いえ。
 代表は、まだ頂いていないものがあるので、鳥を……あなたを野に放す訳には、行かないと申しております」

「……なんだ?
 それは?」

 戸惑いで、俺の口調が自然と尖る。

 そう。

 いつだって。

 アイツの要求はろくなモノじゃなかった。