Holy-Kiss~我が愛しき真夜中の女神達へ~【吸血鬼伝説】

 めきめきめき……


 どどどどどどっ……




 轟音をのこして、炎で脆弱になったアパートの骨組みが、崩れて落ちた。

 ……間に合ったか。

 俺は、ため息を一つつくと、少女を側の木の枝に捕まらせる。

 まるで。

 彼女が、一人でアパートから飛び出したかのように。

 少女を助け出そうと集まってくる人間に、後は任せて俺が飛び立つ間際。

 少女は、俺の服を掴んで、言った。


「助けてくれて……ありがとう……
 天使って……草原と……太陽の匂いがするんだね……?
 わたし、この匂い、大好き」


 ……ふん。

 あんたを助けたのは。

 コレが俺の責任だからだ。

 あんたから礼を……言われる筋合いは……ない。








 そう……何一つ……無いんだ。