Holy-Kiss~我が愛しき真夜中の女神達へ~【吸血鬼伝説】

「おじさんは……天使……?」

 おじ……!?

 てんし……!?

 なんだって?

 言うに事欠いて俺を『おじさん』だと?

 確かに千年も生きていれば、おじさんどころの騒ぎではないが。

 見た目も、声もまだ二十代のはずだった。

 現在の基準ではまだ若いはずだ。

 しかも。

 今まで『天狗』とは呼ばれたことがあるが、『天使』だと?

 基本は、ヒトと変わらない顔つきだとしても、耳まで裂けた口と。

 蝙蝠のような黒い皮膜の翼は、少女にも見えているはずだ。 

 悪魔、と呼ばれるならばともかく。

 神の使いとは、笑わせる。



 都合の良いところしか見せない……魅了の力……か。


 ほとんどの人間は、心を狂わせて、俺に偽りの好意を見せる。

 判っては、いても。

 気持ちのいいものではない。

 俺は、思わず唇を噛んで、半分やけくそのように囁いた。

「ああ!
 俺は、その天使とかって言う奴だ!
 お前を天国に連れに来たんじゃない。
 地上に降ろしてやる……来い!」

 化け物じみた俺の誘いに、少女は、何のためらいもなく、俺に抱きついた。





 そのとたん。