Holy-Kiss~我が愛しき真夜中の女神達へ~【吸血鬼伝説】

「……すまない、凛花。
 では、三ヶ月……いや、二ヶ月で全て終わらせて凛花を、また迎えに行くから。
 今日は、野次馬にまぎれて自分の家に帰れ」

「……残月」

 凛花は、その大きな瞳が一瞬涙で光ったのを隠すように、うなづいた。

「じゃあ、残月は飛んでくれるのね?
 あのコを助けに行ってくれるのね?」

「そうだ。
 ……そして、こんなことが二度と起こらないように、敵を元からツブしに行く」

 これは、オレの罪だから。

 過去に、芽を完全に潰しておけば。

 何人死者が出ているか、判らない、建物が丸々吹き飛ぶような、こんな騒ぎになるはずも無かったから。

 俺の決意に、凛花はうなづいた。

「判ったわ……でも、きっと、残月は、また迎えに来てね?」

 ああ、きっと。

『魅了』に犯された、凛花。

『吸血鬼の魅了』で自分の意思を持てないほど、精神を壊され、俺に偽りの恋心を持っていたとしても。

 あんたは、娘のように大事に思っている。

 『魅了』は、俺の側にいる人間には、男女さえも関係なく全ての人間にかかってしまう。

 俺自身でさえ『魅了』のコントロールはできないのだ。

 大事な『愛』を壊してしまった代わりに凛花。

 あんたには、なるべく安全な場所にいて欲しいから。

 今日は家出をし損ねて。

 結果的にただ遅く家に帰るだけに、なってしまっただけになってしまったから。

 おしおき、と称して義父はまた嘲って、凛花を痛めつけるだろう。

 そんな外道の家であっても、俺の周りにいるよりはきっとマシに違いなかった。




 いきなり、命を狙ってこない分だけは。



 ……そう、信じたかった。