もし。

 凛花が、俺の連れだとわかったら、きっと、ただではすまないだろう。

 こんな大きな爆発騒ぎでさえ。

 世間には、ただのガス爆発事故、で通してしまいかねない組織だった。

 少なくとも、凛花の義父は、彼女の命までは、取るつもりはないだけマシかもしれなかった。

 ……狙われている、俺が凛花を連れまわすよりは。
 


 やがて、巨大な爆発音に驚いて、近所中が一斉に目覚めた。

 ナニが、起きたんだ、と野次馬達は、救急車や、消防車よりも速く集まって来る。

 と。

 その中の一人が、あっと叫んで燃えるアパートを指差した。

「誰かが、中に!」

 見上げれば。

 少女が、アパートの四階のベランダにしがみ付いていた。

 名前は良く知らない。

 しかし。

 確凛花と同じ制服を着て、行き帰りする姿を、何度か見たことがある。

 最上階の五階も、少女のすぐ下の階も燃え上がって、火の粉を振りまいていた。

 アパートに隣接し、今にも煙を吹いて、燃え上がらんばかりの立ち木の陰になって見えづらいが。

 どう見ても、消防車を待っていたら、間に合いそうにない。

 恐怖で泣く事さえ出来ずにいるその少女を見て。





 ……俺は唇をかみ締めた。