吸血鬼は、鏡にも写真にもうつらない。

 本性の化け物じみた姿はともかく、人間の姿はまだバレていないようだった。

 だから、こんな無茶をする。

 俺の人間名と、顔形が判っているのならば、直接アパートの部屋に刺客を送るだろう。

 それでも。

 吸血鬼の姿でいる時は。

 人の意識にから『つい』外れ、結果的には透明人間と同じような効果が得られる『不可視』を使って出入りしていたはずなのに。

 細かい部屋までは無理でも、アパートまでつけられたと言う事は。

 ……奴らの中に不可視が見える者が混じっている……という事だった。

 人間以外の追っ手が混ざっているのかもしれなかった。


「……ざ……残月……」

 呼ばれて、みれば。

 俺の腕の中で、凛花が真っ青な顔をしていた。

「大丈夫だ。
『家』へのの出入り口に使っていたアパートが燃えただけだから、俺に、実害はない」

 言って、俺は、凛花の震える肩を抱く。

 ……無理も無い。

 凛花は、まだ17才でしかない人間の女だ。

 子供、と決めつけられないほど強い心を持ってはいても、こんな危険な体験なんて、初めてだろう。

 西暦2000年をとうに越えた現代の日本では、普通、こんな爆発に巻き込まれる事はまず、無いはずだった。

 ……なのに。