異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。

『もう、いいんだよ、ユズ。それ以上自分を責めるな』


いつもと違う、切なさを含んだ響きの、声。


どうしてか、小さく鼓動が跳ねた。


『君は、頑張った。とてもとてもよく頑張ったんだよ。だからもう、独りで耐えなくていい。辛いことや苦しいことは誰かに分ければいい』


ぎゅ、っとティオンがあたしを抱く腕に力を込める。


『それが僕じゃなくても……君が望むなら。誰か好きなやつに話してご覧。きっと君は楽になれる……』


ティオンの吐息をうなじに感じながら、どうしてそれが自分でないと言うのか――ぼんやりとそう考えた。


「……どうして?」

『ユズ……?』

「どうして、ティオン自身じゃないの?」


ここまで聞いたなら、これが好機とばかり慰め、また口説きに掛かると思ってたのに。どうしてかティオンはそれを避けてるそぶりを見せた。


決して口説かれたい訳じゃないけど、今まで事あるごとに散々甘い台詞を聞かされた身としては、少しだけ拍子抜けする。