異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。




でも、あの事件であたしは悟った。


あたしは、人より目立っちゃいけない。誰かを巻き込んだり煩わせちゃダメなんだって。


だから、平々凡々を好んだ。目立たないよう埋没して。個性を疎んじて。


……でもやっぱり。こんな自分を好きになれない。


本当は、思いっきり走って笑って。はしゃぎたかった。


でも、出来ない。


あの時のトラウマで、感情を吐露すれば。なにかが起きると自らブレーキを掛けてしまう。


誰かの役に立ちたいのに……出来ない。空っぽでつまらない自分が、大嫌いだった。





「だからかな……最近、あの時の夢をよく見るの。暗やみに気味の悪い笑みが浮かんで、目が光って……すごく怖くて。でも体が動かない。叫びたいのに声がでないの」


今も、体が震えてた。


寒さからじゃない。底知れない恐怖から。


「ごめんね。こんなつまらない話しちゃって。すぐ忘れ……」


それ以上、言えなかった。


ティオンが後ろからそっとあたしを抱きしめてくれたから。