致命傷は免れたものの、刺されたには違いない。
あたしは出血で朦朧としながらも抵抗を続け、変態が足を滑らせ頭を打って昏倒するまで。どれだけの時間が掛かっただろう。
変態のポケットから飛び出した携帯電話を掴み、必死に家に電話して。姉が出た瞬間に気を失って。
次に気がついた時は、病院のベッドの上だった。
そして。
父が死んだと聞かされ、あたしは泣き叫んだ。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
あたしがもっと早くどうにかしていたら、お父さんが死ぬことはなかったのに。
あたしがもっと我慢してたら。
お父さんを巻き込まなければ。
警察から事情を聞いたお母さんとお姉ちゃんは、あたしを怒らず、ごめんねと一緒に泣いてくれた。
気づかなくてごめんね。
放ったらかしでごめんね。
大きな存在を失ったあたしたち家族は、それを埋めるように。今までを取り戻すように。家族として濃密な時間を過ごした。
母は仕事を辞め、あたしの側にいてくれたんだ。



