異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。




『さあね~でも、安心して。僕が今から正義の鉄槌を下すからあぁあひゃひゃひゃ~』


狂った様に笑う受話器を叩きつけ通話を切る。そして、急いで部屋に戻り携帯を手に取る。


早く早く……! 祈るような気持ちで呼び出し音を聞いていたあたしは、気が焦るばかり。

『はい、日高です……ゆずか、どうした?』


電話に出た父に、あたしは急いで事のあらましを説明する。要領を得ない話を辛抱強く聞いた父は、落ち着きなさいと言ってくれた。


『おまえの方が心配だ。出張を早く切り上げて今から帰るから、戸締まりをしっかりして待っていなさい』

「お父さん! ダメだよ。ホテルにいるんでしょう。あたしは大丈夫だから、誰かと一緒にいて」

『平気だよ。私は昔柔道をやってたんだ。なよなよした男くらい投げ飛ばしてやるさ』


父は心配するな、と笑って電話を切ったけど。あたしは不安でならない。父が出掛けた場所と帰りの電車を調べて、駅に向かい自転車を走らせた。


そして、無事に父の姿を見かけてホッとした。2人で笑いあい、念のため歓楽街を通り帰る。