父は度々あたしと一緒に眠っててくれた。母は当てつけるように姉と一緒に。
それでも、よかった。
お父さんの腕のなかは暖かくて大きくて。すっごく安心できたから。
心配したのか、お父さんは早く帰ってきてくれるようになった。
だから、あたしはお父さんにだけは不安な事を伝えた。
「なるべく人通りが多い場所でみんなと一緒にいるんだよ。それからこれを持ちなさい」
そうアドバイスくれた父は子ども用のケータイを持たせてくれた。
GPSで居場所も把握でき、防犯用のベルにもなり、ボタンをワンプッシュすれば必要な番号にかかるもの。
3つのボタンには家、父さんの携帯、母さんの携帯番号が登録された。
父は担任の先生にも話をしてくれ、担任の先生も気を付けますと約束してくれた。
そのせいか、電話が来なくなった。
嫌な視線も感じなくなった。
夜はお父さんと一緒に安心できる。
やがて、幼女を狙った痴漢が逮捕される。
全てが解決したと思ってた……そのはずだった。



