4月も終わりに近づいたある日、クタクタになるまで遊んだあたしはいつも通り、留守番電話を聞いた。
そこには今日も遅くなるから、冷凍食品をチンして食べなさい、って母からのメッセージ。
姉からは撮影で遅くなるって連絡。
それだけか……と思ってたけど。
もう一件だけ、留守番電話メッセージが入ってた。
公衆電話からという、知らない電話番号。
誰かかな……と再生したあたしは、身が凍るかと思った。
『ハァハァ……ゆ、ゆりちゃんだよね? ぼ、ぼく……君を愛してるんだ。ハァ。その証拠にぼくはきみのことを何でも知ってるよ』
そして、息が荒い男は事細かに毎日の習慣を挙げていった。
毎日夕方に野良猫と遊ぶこと。2日前に男の子と遊んで泥まみれになって、お母さんに怒られていたこと。テストを川岸に隠したことまで、男は知ってた。
そして、こうも言った。
新聞受けにプレゼントを託した……と。
子機を持ったまま恐る恐る確かめてみれば、確かにプレゼントがあった。
でもそれは……
1年前に部屋で無くしたはずの、お気に入りのぬいぐるみだった。
家族と友達以外誰も入れたことがない部屋の棚の奥に。姉にも知られないように隠して、たまに自分だけで遊んでたのに。
お父さんからの内緒のプレゼントで、あたしとお父さん以外誰も知らないはずなのに!
『ぼ、僕からの気持ちさ。ゆりちゃん、ま、毎日プレゼントをあげるからね。僕の愛は全て君のモノだよ』
声にならないあたしの叫びが、夜の闇に吸い込まれていった。



