異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。




『そうだね。ショウウンアゲハって言って、幻の蝶を夢中で探したな。普通の蝶と違って、羽根が透けてる上に、夜に鱗粉が淡く光るんだ。一度は見たい! って、みんなで家出まがいの事をして、王宮中が大騒ぎになった出来事があったな』

「え~! そんな事をしたの? まさか、きょうだい全員で王宮を出ちゃったの!?」

『もちろん。あの時僕は5つ、ライベルトは7つ。兄上は10と8つだったな。王太子の兄上が率先して、近くの渓谷に子どもだけで行ったんだ』

「……そりゃ大騒ぎになるはずだわ。国の将来を担う子ども達がごっそりいなくなったんだからね。それで、せめて食料や衣服は持っていったの?」

『一番上の兄上が用意してくれたんだ。それでも無謀なことに変わりはなかったが』


微苦笑したティオンは、空を見上げる。


『やっぱり無謀なことで、結局蝶は見れずに空腹と寒さと疲れで、泣きたくなったよ。でも、何でかな。あの経験は今でも誇れるよ。あちこち傷だらけ土まみれになったのに。不思議だね』


そう語るティオンはやっぱりまだ少年の面影を残す、一人の男の子だった。