異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。



「添い役? なにそれ」


『王太子や王子の成人の儀の時に必要な、いわば臥し役の姫だよ。まあマスコットみたいなものだし。そんなに気負わなくていい』


マスコット……ねえ。いわゆるイベントのアピールキャラクターみたいなものか。


「あたしでいいの? なんか責任重大な気がするけど」

『君は異世界から来た伝承の姫。役割を果たすには十分過ぎるくらいさ』


絶対に必要な役だよ、と言われて。あたしは渋々頷いた。だけど……。


あたしの中に不安があった。


さっき見た、ライベルトの姿が。赤い目をした男の瞳が。ハイドラーさんの怯えた様子が目に焼きついて離れない。


「それで、交換条件って訳じゃないけど。あたしを領地だけじゃなく、他の土地にも行かせて。国内の農地の視察と、その手助けをしたいの」


胸に涌き出した不安が。あたしを突き動かす。

まさかと思うけど……ね。

『いいよ。ただし、僕の同行が条件だ』

ティオンはあっさり承諾してくれたけど。彼が隣で控えている幼なじみの不審な行動を知ってるのか、気になった。