異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。




『……帰りたいのですか』


低いライベルトの問いかけに、猫を撫でる手が止まった。


簡単に、答えていいものか。


あたしは王宮に保護されてる身分。お世話になっている以上、帰れるならサヨウナラ、では無責任な気もする。


「もしも帰れる手段があるとしたら……」


曖昧に答えた。今のところ帰してとティオンに懇願した事はないけど、もし願ったら彼はどうするだろう? 強引に連れて来られたなら、帰してというのも当然の権利だけど。


……飢えに苦しむ人たちがいて、それをあたしが救えるなら。必要とされるなら。まだ留まりたい気持ちがある。


ここでだって、劣等感は拭えないけど。少なくとも役に立ってる実感がある。


あたしは自分が大嫌いだけど、ここにいれば好きになれるかもしれない。


お姉さんやお母さんと同じように、なにかを為していると胸を張って言える。あたしだけにしかない力で……。


努力で得たものじゃないから、多少後ろめたさがあるけど。


「それでも、まだしばらくはいようかなって思います」