異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。



ああああ~……あたしの平穏な日々はどこへ逃げ去った?


お姫さまどころか村人Zの完全モブ役が似合う、完璧地味な外見なのに。


ドレスだって一番地味なのを選んだのに、着ているというより着られてる。紺色のメイド服のキキの方がよほどお姫さまに相応しいじゃないさ。

自らの不幸を嘆いてたら、耳に可愛らしい鳴き声が。


「ニャアン」


チリン、と涼しげな音が聞こえて振り向けば。あの銀色の猫がいた。


「あら、久しぶり!」


猫は何の躊躇いもなくあたしの膝によじ登り、そのまま腰を落ち着けくつろぎだした。


「きゃあ~かわいい」


また触れたかった毛を撫でれば、気分が少しだけ浮上する現金なあたし。


それを見たライベルトの目元がピクリ、と微かに動いたのは知らなかった。


『……その猫がそんなにお気に入りですか』

「まあね。わずかにだけど、家に一緒にいたし。あたし、動物大好きだから」


家族のことは、考えないようにした。思い出すと絶対に泣きたくなるから。