異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。




あのセクハラ魔王の振りまく無駄な愛想と足して2で割ればちょうどいいかもね。


第一、彼は王太子付きの近衛隊長という要職にありながら、下働きに化けてあたしを騙してた。(監視してた時のね)


それなのに申し訳ないとかひと言も言わないんだもん。


「救国の英雄さん。あなたの見立てでは、帝国がまた戦争を望んでいると思うの?」

『いいえ。ですが、あなたがいれば痩せた土地でもあらゆる農作が可能になる。なれば、戦争という面倒な手段よりも、あなた一人を帝国へ連れ去れば済む話です』

「は? 連れ去るって」


予想外な話になってきて、あたしは目を瞬いた。


「帝国が、あたしを狙うってこと?」

『無論。王太子殿下が一番恐れているところはそれです。
あなたが現れ一月あまり。箝口令は敷かれていますが、あなたの……伝承の姫が現れたという噂はとうに広まっています。
実際に国内に流通する農作物は増えて飢える民が減った。

それゆえ帝国の間諜が様々な探りを入れている。

そんな時に自ら宮の外を歩くなど。拐ってくださいと言うようなものですよ』