「ゆず、ゆり。わたしは今日も遅くなるから、用意した夕食をレンジして食べなさいね」


眩しくて……め、目が潰れるっ!


バスルームから出たあたしを待っていたのは、華やかなオーラと出来る女オーラをダブルで纏った母・日高 ゆい だった。


日本有数の商社に勤める母は、女性ながらも営業課長を任されており、毎日毎日忙しい。今日みたいにあたしがいる時に出勤なんて、一ヶ月に一度あるかないかだ。


やや濃いめの栗色の髪を後ろで結い上げ、ピシッと折り目が着いたスーツを着こなした母はとにかく美人でスタイルがいい。42とは思えない若々しさで、いつも誰かを虜にしてる。


クラクションの音が玄関から響いた。たぶん、部下の相沢さんだ。独り身の母を彼はあからさまに狙ってるから。


「母さん、気をつけなよ。年下部下でも男はみんな狼なんだから」


そうのたまうのは3歳上の姉であるゆり。学祭でN大ミスキャンバスに選ばれた現役モデルで、英語も通訳を務められるほどの才媛だ。姉も……あたしには眩しすぎてならない。