異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。




『それに、ここは君のいた“チキュウ”ではない。別の惑星にある国のひとつ……セイレスティア王国だ』

「う、嘘!」

『君を騙して、僕に何の得がある?』


セクハラ王子の声音が、低くなる。 今までの陽気さは鳴りを潜めて、尊大な性質が頭をもたげる。


そう、それはまぎれもなく。


カチンと来たあたしは、怯むもんかと抗議を続けた。


「じゃあ、なんでライベルトさんがライとして下働きの職場にいたのよ! どうせあんたが命じて監視させてたんでしょう」

『なるほど、まるっきり空っぽな頭じゃないみたいだな』


肯定どころか、あからさまにバカにした言葉を投げつけられ、頭に血が昇るかと思った。


でも……。


(いい? いざという時こそ冷静になりなさい。ビジネスの世界は笑顔の仮面を着けて、腹の探りあいなんて当たり前。自分が有利になるためには感情的になるのが一番致命的になるから、気をつけるのよ)


お母さんのビジネス論がふと思い浮かび、冷静になれと深呼吸を繰り返す。