異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。




『一刻の後より成長が早まり、ほんの三刻ほどで晩秋の実りを確認致しました。詳細な経過は書記官が報告書を取りまとめております』

『確かか』

『この剣に賭けて』


ライ……いいえ。ライベルトは腰の剣を鞘ごと手に取ると、それをセクハラ王子の前に置いた。


意味はわからないけど、たぶんとても重要な宣誓に違いない。


『と、言うわけだよ、ユズ』


セクハラ王子はあたしをそっと下ろすと、直ぐにその姿がカーテンによって隠された。


「意味がわかんないよ」


『つまるところ、君が触れた穂を中心に、麦の成長が早まったってこと』


セクハラ王子はカーテン越しでも、器用にあたしの腰を抱き寄せる。


「ちょ……どさくさ紛れにどこ触ってんのよ! って言うか……ずいぶん手の込んだ悪戯じゃない? あたし一人を驚かすためにこんな」

『やっぱり信じられない……か。それも無理はないね。君の世界はずいぶんと即物的だった。言の葉の命は力を失い、尊きものは軽んじられる』


セクハラ王子の言葉に、どうしてかあたしの胸が痛んだ。