異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。




いえ、正確には違ってた。


黄金色に輝いて見えたのは、風を受けてそよぐ麦穂。


昨日見たのとほぼ同じ景色の中で、青々しかった麦畑が全て黄金色に色を変えてたんだ。


「……これって」

『君の力だよ、ユズ』

「えっ!?」


あたしは目を見張った。


あたしの力って……


「はあ? 何言ってんの。あたし何にもしてないんだけど」


『うん、そう言うと思った。だから……ライベルト!』

『はい』


カツン、と硬い足音が響く。


いつの間に控えていたのか、一人の男性がこちらへ歩いてくる。


サラリとなびくクセのついた黒髪。


鋭い双眸の瞳は、深い蒼。


身を包むのは緑色の軍服。


……現れたのは、あたしが知るライだった。


彼はセクハラ王子の脇にやって来ると、その場で跪いた。


『ライベルト隊長、報告を』


『はい。昨夜より監視を続けておりましたが、ユズ様がお手を触れた箇所より変化が起きました』