あたしは麦畑の傍らに膝をつくと、小さな麦穂を手にした。
麦は全てまだ青々としていて実りには遠そうだ。根元の地面はひび割れていて、なんとなく水不足なんだと分かる。
麦畑のお世話はした事がないけど……。
(どうか、豊かな麦が実りますように。頑張って大きくなってね)
手のひらに載った麦穂をもう片手で撫でながら、そう祈ってみる。
凶作だと経費削減のために離宮のリストラが断行され、あたしだけならともかくキキもクビになるかもしれない。それは避けたかった。
この世界に来てまだ10日くらいだけど、キキは姉妹みたいに仲良く親身になってくれる。行き場のない彼女が失業するのは嫌だ。
そう思いながら撫でてる指先が、ほんのりと熱くなった。
え、摩擦熱!?
慌てて離してみると、特に何ともない。
……どうしたんだろ、あたし?
『ユウ、早く早く! 帰らないとご飯なくなるよ』
「う、うん。待ってて、今行くから」
《ありがとう……》
「!?」
また、声が聞こえた?
慌てて周りを見渡してみたけど、やっぱり誰もいない。首を傾げながら帰途についた。



