「ユズ、おいで」
学舎から出てティオンが手を差しのべたから、何だろうと思って彼の手を取ると、少しだけ歩いた先にこじんまりとした建物が見えてきた。
白い壁の四角い建物は、一軒家よりやや大きめ。学舎とそう変わらない程度の規模だ。
「これって?」
「入ってみて」
ティオンに促されるままに足を踏み入れると、中は清潔な造りで。幾つかの椅子が並び奥に小さな部屋がある。
そこには簡易的なベッドが並び、白いカーテンが仕切りになっていて。白い棚やテーブルが置かれてた。
どこか見慣れた光景に、驚きしか感じない。
「……ここって」
「うん、診療所だよ」
ティオンは事も無げに答えをくれた。
「君が以前から、医療事情について気にしてたのは知ってる。積極的にハーブや薬草を育てて、それらをみんなに分けていたこともね」
ティオンにはホントに、何も隠し事は出来ないらしい。
以前、あたしの育てた薬草で国王陛下のご病気が快癒して以来、こっそりといろいろ育てて困った人たちにあげてたんだよね。
王宮や離宮の人たちだけだともったいないから、外部の人たちにも役立てたいと思って。
もちろん、病気だけじゃなくケガに関しても。
あたしはあの忌まわしい事件でひどいケガをした上に、お父さんを亡くしてしまった。あの時その場できちんと治療出来てたら、お父さんも助かったかもしれない。
大切な人を亡くす――そんな辛い思いをする人たちが少しでも減ったら、と思って。



