あたしはついついうつむいてしまって、ティオンの顔を見れなかった。
だって……あたしはきっとよくない顔をしてる。
何の遠慮もなくティオンのそばにいられるだろう、顔も知らない令嬢やお姫様たちに対して。
あたしが伝承の姫だの乙女だの持ち上げられたところで、結局何の身分も特別な能力もない。あるのは言霊の……自分で努力したのでない力のみ。
言霊だって必死になって磨いたり身に付けたものでないから、何だか借り物みたいでしっくり来ないし。それを抜きにすれば、あたしが出来ることなんてたかが知れてる。
大貴族の令嬢や王族であればもたらせるものを何一つ、あたしは持っていない。
最近はそれだけじゃ駄目だって、無駄飯食らいにならないよう自分の食いぶちは稼ごうかと試行錯誤してるけど……。
「ユズ」
ティオンは何を考えたのか、あたしの背中に手を添えて立ち上がると、そのまま隣に腰掛けてティーポットを手に取る。
それから慣れた手つきで彼がお茶を淹れる最中、柔らかくて香ばしい、かぎ慣れた香りが鼻腔をくすぐった。
「はい、飲んでみて」
ティオンが差し出したティーカップをソーサーごと手に取り、中の色を見て思わず目を見開いた。
ティオンの視線を感じて促されるままに中のお茶を口に含むと、ふんわりと優しいまろやかな味と渋味と香りが広がっていく。
「……これ……」
「うん、“緑茶”。ユズが好きだって言ってたから、ずっと試行錯誤してやっと出来上がったんだ。ユズに一番に味わって欲しかった」



