確かに。国のためを思えば、ティオンはどこかの王女や大貴族の令嬢を迎えた方がいい。そうすれば政局も安定するし、ティオンも磐石の後ろ楯を得られる。
あと数ヶ月で国王に即位するティオンにとって、政略結婚がもたらすものにどれだけ益があるか。
あたしがいる限り、ティオンはそういった政策は取れない。
「……ティオンこそ、いいの? 本当にあたしで」
思わず本音をこぼせば、ティオンの顔に不審げな表情が表れた。
「あたしは……本当にティオンの隣にいて良いのかな? って時たま思うんだ。
だって……あたしよりティオンに相応しい人はたくさんいるでしょ?
そりゃあ……あたしも自分なりに努力してるけど。それでも日本でもド庶民だったし。母子家庭だったし。
この世界にいても何の後ろ楯もない……本当にティオンの役に立てるか……自信がないよ」
本当なら王族に謁見出来ることさえおそれ多い身分なのに。こうしてそばにいて良いのかな……って思う。
それに……。
「あたし……知ってる。ティオン……ハルバード公爵の一人娘であるセシリア様を振ったんだよね?」
声を震わせないように努力しながら、何とかそれだけ言うと。ティオンはハッとなったように目を見開いた。
「……どうしてそれを?」
微かに温度を取り戻したティオンの声に、やっぱりという想いを強くする。
セシリア・ハルバード……宮廷第一の勢力を誇る大貴族。ハルバード大臣の長女だ。
そして、ティオンの幼なじみで。あたしが現れるまでは公式に婚約者同然で将来の后と見なされていた女性だった。



