異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。




「ティオンバルト殿下」


そっとあたしを離したライベルトは、親友であり主であるティオンに向かって膝を着き頭を下げた。


「私は誓って後ろ暗い事などしておりません。誤解がないように申し上げておきますが、ユズ様とはただ思い出話をしていただけです」

「そ、そうだよ! ディアン帝国について教えてもらってただけ。それで……」


あたしはライベルトに続いてティオンに話した。何も疚しくないんだって。

いつから見られたのか知らないけど、ティオンはきっと誤解をしてる。だから、それを解こうと懸命に説明をした。


「あたしはみんながいてくれてよかった、って感謝をしてただけだよ」

「へえ、ユズの感謝の仕方は身体を寄せて、キスをすることなんだ?」

「え?」


いつもは陽気とも言える明るいティオンの声は、全く暖かさがない。どころか背筋が寒くなる冷たさが含まれてた。


「キスって……あたしそんなこと……しないよ」

「そう?」


ティオンは滑るようにあたしのそばに歩み寄る。その綺麗な瞳は何の感情も浮かんでなくて、思わず後ずさった。


トン、と背中に当たったのはソファの背もたれで。ティオンは両手の手のひらをそこに着けてあたしの身体を閉じ込めたまま命じた。


「ライベルト、キキ。ここから出ろ。しばらく誰も近寄らせるな」


命じることになれた尊大な言い方で、あたしはカチンときた。


けど、キキが頭を上げて必死に言い募ってくれる。


「恐れながら申し上げます。お二人には何も……」


そんなキキに、スッとティオンは目を細め重ねて命じた。


「出ろ」


鋭く重い傲岸な命令に、彼女は口をつぐむと。あたしに申し訳なさそうな顔をして出ていく。


2人が出ていった後のサロンは日の光で暖かいはずなのに、どこか凍るように寒かった。