あたしだってセイレスティアに来てからこの数ヶ月、ただ馬鹿みたいに護られてた訳じゃない。
この世界に残ると決めてからは、なるべく理解をしようと本を読み漁った。日本にいた頃も図書館通いをしていたから、本を読むのは得意で。離宮にある図書館の蔵書で目ぼしいものは今も毎晩貪り読んでる。
それに、あたしに与えられた役割。この世界に来た意味もちゃんと考えてる。
十分に理解したとは言えないけど、ない頭で必死に考えてきた。時折キキに相談しながら。
「ねえ、ライベルト。あたしは確かにティオンの婚約者だよ。だけど、あたしはあなただって大切な人なの。だから、あなたの故郷がもっと豊かになれるよう努力したい」
誤解にならないようにゆっくりと言葉を選びながら、あたしはライベルトに伝えていった。
「あたしのこの、言霊とか言われる力……努力で得たものじゃないから、あんまり胸を張れないけど。せっかくあるものを使わなきゃもったいないじゃない?
それはセイレスティアだけじゃない。ディアン帝国や他の国にだって活かそうと思うの。
最近は種だけに試してもだいぶ成長が良くなることが解ってきたし。それに、あたしにだって日本で得た農作業の知識もある。
あんまり大規模な灌漑とかは難しいけど、それなりの勉強はしてきたから。そういった知識をみんなに伝えれば、だいぶ楽になると思うの。
あたしは少なくとも、この大陸にいる人たち全てが飢えずに済むように、出来るだけの努力をしたい。
みんながお腹いっぱいになれば、余裕が生まれるはず。そうすれば戦争なんてそう頻繁に起きないでしょ?
そして、それはライベルトにも手伝って欲しいんだ」



