異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。




あれ?


なぜライベルトがあたしを見たまま固まるのか、ちょっと意味が解らない。別におかしな発言とかしてないよね?


今のファッションだって一応王族の住まいに相応しい清楚なワンピースだし。髪型だって長くなった黒髪を緩く編んでもらってる位で、特に変とは思えないけど。


「ライベルト、どうかした? あたし何か気に触ることでも……」

「いえ、何もありません」


ライベルトの様子を見ようと椅子から腰を浮かしかければ、彼はいつも通りの無表情になって即座に返事をくれた。


こちらを見て一瞬だけ目を細めたのは見間違い……かな?


「男性が頂いて喜ぶ菓子類でしたら、やはりくどいものや甘過ぎないものが宜しいかと。中にはそういったデザートが好きな人間もいますが、大概は女性程ではないでしょう」


そつのないライベルトの回答だけど、あたしは少しだけ引っかかりを感じた。


“ライベルトの”って主語に対する答えになってない。どうもそれはわざと避けられた風に思える。


ならば、とあたしはストレートに彼に疑問をぶつけてみせた。


「そうじゃなくて。ライベルトが好きなお菓子はなに? って訊いたの」

「そういった個人的な話は申し上げられません」


にべもなく回答を拒否られましたよ。


まるで、出会ってそう経ってない頃の彼に戻ったように素っ気ない。


やっぱり……ティオンの婚約者というあたしの立場上、異性として親密にならないように気をつけているんだろうけど。何だか寂しかった。