異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。




ユズは夢で何があったかなんて憶えてない筈だ。目覚めれば忘れる様に僕が仕向けたのだから。


けれど、夢で逢えば思い出す。


ユズとは毎晩逢えた訳じゃない。時空や異次元の重なりが揺らぎ、何もかも曖昧になる時期にしか逢えなかった。


それは多いときで月に一度。間が開けば半年に一度もない。


それでも、僕にとって彼女との会瀬は何よりの安らぎで。少しずつ自分を受け入れ努力する原動力になったのは確かだ。


ユズとはいろんな話をした。


彼女の住むチキュウという惑星の、ニホンという国のことも。どんな毎日を過ごすのかや、家族や友達のことも。


ユズと過ごせる彼らが羨ましかった。


僕もこんな夢の中でなく、現実の太陽の下で彼女と触れあいたかった。


ユズと会って3年も経つと僕もすっかり王族としての自覚が芽生え、自らを偽り本音と建前を使い分けるようになる。それでも彼女と逢えば、心が軽くなる。全てが清められ暖かな感情で満たされる。


それは、呼吸をするように。水を飲むように。当たり前でいながらにして必要不可欠な行動。


彼女だけは素のままの僕をありのまま受け入れてくれる。


十になる頃には彼女に抱く感情がなんなのか、薄々勘づいてはいたけれど。あえて見ないふりをして逢い続けた。


――けれど。唐突に終わりがやって来た。