異世界にて、王太子殿下にプロポーズされました。




「また、会えるかな?」

「うん! きっと会えるよ。そしたら一緒に遊ぼうね」


僕の希望を載せた言葉に、彼女――ユズは迷いなく頷いてくれる。


彼女自身も僕と逢いたいと望んでくれている。だから、躊躇いなんてあるはずもなかった。


「じゃあ、約束しよう。また逢えるためのおまじない」

「おまじない?」

「うん。必ず逢うために必要なおまじないだよ」


ユズはきょとんとした顔で首を傾げる。その無意識な可愛らしさをわざと見過ごしながら、僕はユズに頼んだ。


「この黒水晶を僕のおでこに当てて……それから自分の口をくっつけてみて。また会えますように、って願いながらね」


「うん!」


ユズは素直に黒水晶を僕の額に当てる。そして、「おでんくんとまた会えますように」と呟いた。


……おでんって何だろう? 少なくとも僕じゃないよな、と思いながら、ユズが黒水晶に口づけるのを待つ。


――刹那。黒水晶が金色の光に包まれ、無数の細かな光に変じるとそのまま僕の中に入り込んだそれは見えない刻印となり、僕の額に刻まれる。


そして、僕もユズに同じことを返した。


ただ、僕と違うのは彼女の心臓に近い部分に刻印を施したということ。


――後に彼女がそこに傷を負うのだけど。偶然にも刻印が命を救ったと知るのはだいぶ後の話になる。