『1人より……2人? 何を言ってるんだい、ユズ』
ふっ、とティオンがまたあの悲しい瞳になる。
『僕を支えたい奇特な人間なんて、いないよ。世界中探したってどこにもね』
「ティオン! あなたはあたしに言ったよね? “自己評価が低くすぐに自分を卑下するのが君の悪い癖だ”……って。あなただって一緒でしょう。
ちゃんと、話しなさいよ!」
あたしはティオンのシャツの裾を、キュッと握りしめた。
「……少なくとも……ここに、あんたを理解したい……支えたいって人間がいるんだから……」
お願い、解ってよ。
あたしはそんな気持ちを込めて、ティオンの背中に顔を凭れかけた。
自分一人で悩んで追い詰めないでよ、と。
熱い滴が、彼のシャツを濡らす。
風が吹き込んで、あたしの着てるドレスの、幾重にも重なったレースを靡かせた。
『……参ったな』
ふう、とティオンが息を吐いた。
『ユズ、君は本当に悪い娘(こ)だね。僕を煽るのがとても上手だ』



