青森で事情を聞いたときのことだ。

水原ゆきこは、静かに話し始めた。

「美香さんを殺してしまったと打ち明けられました。倖太が実の子供だということも、渡米するつもりだったことも。美香さんと言い争いになり、どこか打ってしまって、それきり動かなくなったと」

「本人がそう話したんですか」
「美香さんは二人でアメリカに移住するつもりでした。ただ条件がひとつだけありました」

「倖太くんに、本当の母親が誰かうちあけること。全て話して納得してもらいたかった、そう話していたらしいです」

「倖太くんの母親は、水原アヤなんですね」
「はい。倖太くんはアヤの子供です。あの子はふるさとを捨てて、家族も捨てて、それでも美香さんと行くつもりだった」

メモを取りつつ、玉木は首をかしげた。
親友を殺さなければならないほどのことには思えなかったからだ。

「アヤにはできませんでした。自分の欲のためだけに産んだ子に、なんで今更本当のことを話せましょう」

どういう意味だろう。

「倖太くんが自分の子供だとアヤさんが仰ったんですね? 間違いありませんか」
「はい」
「どこで出産したかお聞きになりましたか」
「友達の病院でです」