収録の日、オレは「ちょっと仕事があるから」と言って家を出た。
『ネットのチカラTV!』と張り紙がある控え室で、メイクしてもらう間、簡単に台本の説明をされる。
この番組は視聴者に、容疑者や目撃情報を求める番組だ。

「再現VTRの後に喋ってもらいます。カンペが出ますから、ゆっくり悲しそうに話してください。慌てないで」

説明が終わり、ヘアメイクの女性が話しかけてきた。

「あなた、琴音くんのところのマネージャーさんですよね?」
「ええ。今日は出演する側なんです」
「こないだのタモステも見ましたよ。ダンスできるんですね」
「……ええ、少し」


本当はオレ、歌手なんだけどな。

テレビ局が用意しスーツを着て、髪をセットしてもらう。

プロデューサーの橋本がやってきた。


「倖太くん、今日は君がメインだ。うまく悲しい感じ出して喋って」
「はい」
「よし、行こう」


ADが呼びに来た。




「橘さん、スタジオに入ってください」