ーーーガラッ…
僕はドアに手をかけて、
鈴奈さんと家に戻ってきた。
通夏さんは少し驚いた顔をして、
「終平…、戻ってきたのかい?」
と悲しそうな顔をした。
僕は鈴奈さんに少しの間、鈴の所へ
行ってもらうようお願いをした。
そして、通夏さんと2人になって、
僕は通夏さんの背中で笑う赤ん坊を見た。
「お前に手紙を託すよ。僕は戻れないから…」
何年先でも構わない。
「君が僕の弟になってくれてよかったよ。」
僕は赤ん坊に手紙を手渡した。
すると、赤ん坊はそれに
答えるようにニッコリと笑った。
そして、通夏さんと向き合って僕が見せたのは…
「僕は必ず戻ってきますから。」
嘘つきな笑顔だけだった…。
僕のできる精一杯の笑顔だった。
「僕の飛行技術が認められたんです。
だから選ばれたんです。喜んでください。」
僕は通夏さんが悲しむ顔が見たくなかった。
大丈夫…僕は死なないから。
必ず生き延びてみせるから……
ただ、それを胸に抱いて僕は笑った。