葵に抱きしめられていると、落ち着く。

オレも、葵の背中に腕を回した。


多分、葵も不安だったんだと思う。

部長だし、オレ以上に期待と不安があったのかもしれない。

何も喋らないけど、オレにはそれだけで十分だった。

むしろ、この沈黙が心地いい。


焦ったってしょうがない。

今は、残り少ない時間をどう有効に使うかだ。

それに気づかせてくれたのは葵だ。


この前のことだって‥。

好きか嫌いか、なんてもんじゃ言い表せない。

恋愛感情ではないかもしれない。

けど、オレにとって葵は大事な存在だ。


心の中のモヤモヤは、もうなかった。

この気持ちはまだわからないけど、大切に思ってる事には違いない。

嫌いだったはずなのに、なんか笑えてくる。

「何で、笑ってるの?」

「いや、別に?」

笑いが止まんねー。

「ふーん。」

「なぁ。」

いい事考えた♪

「ん?」

「さっきはよくもオレの事、打たれ弱いとかガラスのハートとか散々言ってくれたな。」

いつもの調子に戻ったところで、葵をいじめるか。

「い、言ってないよ。
そんな事。」

目、泳いでるから。

「お前はオレのパシリだよな?」

「うっ。」

「でも、ありがとな。」

ギュッと少し力を込めて、葵を抱きしめた。